春、フランスの北東、アルザスへの旅 2013.03.25
  アルザスの雑貨メモ
                   
 最初にアルザスを訪れたのはいつのことだったか、今となっては、もうすぐにはとり出せないほど記憶の奥にしまわれている。その頃はまだ、パリの東駅が、暗く鬱蒼としていて、アルザスの中心都市のストラスブールまで、電車で5時間か6時間くらいかかっていた。

 私の心をアルザスへ向けたもの、それはアルザスのスイーツだろう。そして、お隣りドイツと交じり合ったフォークロアな文化。漆黒の大きなリボンを頭につけた民族衣装、行儀よく並んだカラフルな木組みの家、粉雪がつもったみたいな帽子形のお菓子クグロフ、濃いグレー地にコバルトブルーで模様をつけた焼きものがあることを知り、私は心を躍らせた。

アルザスの村
Soufflenheim/スフレンハイム
花、鳥、ドットなど様々な模様とカラフルな色合いが特徴的なアルザスを代表する陶器。この陶器が焼かれている町の名前でもある。クグロフというお菓子の型、ベッコフという郷土料理を作るための鍋といった調理器具の他、お皿やピッチャーなど、テーブルウエアとしても人気が高い。
   

クグロフ

スフレンハイムのクグロフ型
 パリの小さな書店で、マリンブルーのブルターニュの本と対で、深紅の布張りのアルザスの本を購入してからというもの、アルザスで見たいもの、味わいたいもののイメージはよりリアルなものになり、アルザス熱に拍車をかけた。

 「アルザスを訪れるならやっぱりノエル(クリスマス)じゃない。アルザスのマルシェ・ド・ノエル(クリスマス・マーケット)は一度見ておくべきよ。」とアドヴァイスされたが、最初に行ったのはノエルの時期じゃなかったと思う。そのアドヴァイスは大切にしまっておいて、何回目かの旅のときに実現できた。ノエルを待ち焦がれるアルザスは、街や村全体が、クリスマスショップみたいでかわいかった。

Betschdorf/ベッチドルフ
フランス語で「gres グレ」というF器(石のように固く焼締めた陶器のこと)が焼かれている町の名前。グレー地にコバルトブルーの模様が特徴で、丈夫で防水性があるので、主に壺やビンなどの保存容器として使われている。
   
 また行ってみたいなあと思うのはPâques(パック)、復活祭の時期。パックは、年によって変わる移動祝日だ。3/22から4/25の間のいずれかの日曜日が復活祭に当たり、その翌日もLundi de Pâques(ランディ・ド・パック)といって祝日になる。アルザスの春の暖かいような冷たいような曖昧な空気は、肌を刺すように冷たいノエルの空気より断然好きだったし、何よりも、ショウウインドウに並ぶ「羊のお菓子」を眺めるだけで、来た甲斐があったなあと思った。もともと復活祭には、聖書に基づき、仔羊の肉を焼いていただくのが伝統らしいのだが、アルザスはお菓子まで羊なのだ。
アルザスの赤い本

パック、復活祭のページ
                   

羊のお菓子
 羊のお菓子というのは、Agneau de Pâques(アニョ・ド・パック)もしくはAgneau pascal(アニョ・パスカル)と呼ばれ、「復活祭の仔羊」という意味。スポンジケーキのようなシンプルな生地を、羊の形をした陶器の型で焼く。すっかり冷めたところに、クグロフ同様、純白のパウダーシュガーをまんべんなくふりかける。焼きっぱなしよりも羊っぽさが増して一層かわいい。ホテルまで大切に持ちかえり、たっぷりのカフェオレと一緒にいただいた。泡立てた卵の力で膨らんでいるのと、余分なバターを使ってないからか、口当たりがすごく軽い。自然で、素直で、やさしい味。復活祭の時期に、卵やウサギの形をしたチョコレートが並ぶのはパリも同じだけど、この羊はアルザスだけなのだ。

Kelsch/ケルシュ
アルザスの田舎の冬の手仕事として織られていた生地。生成地に赤、生成地にブルー、もしくは生成地に赤とブルーのチェック模様というのが特徴。その昔は麻で、今は麻と綿の混合布、綿でも作られている。

 村を散策していたら、小さな教会の別棟みたいなところで、村主催のマルシェ・ド・パック(復活祭のマーケット)が催されていた。復活祭のマーケットなんて初めて聞いたので、興味津々でのぞいてみると、パステルカラーの卵のオブジェがたくさん売られていた。その昔から、復活祭には、茹でた卵や中身を抜いた卵の殻にペイントして、大人が庭に隠し、子供たちに探させて楽しんだ。今は、この時期のデコレーションとしても楽しまれていて、ノエルのオーナメントのように、窓辺や葉のついてないスッーとのびた細枝にぶら下げるのだという。

 復活祭の頃のアルザスは、ノエルの頃よりもずっと印象に残る旅になっている。

卵形のチョコレート
 
                   
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