4. パリジャンとカーシェアリング(後半)  2014.1.21

パリでは、昔から、アパルトマンやアトリエをシェアする文化が根づいています。近年は、自転車や車といった交通手段、さらには家庭菜園などをシェアする試みもすっかり定着し、新しいスタイルとして毎日の暮らしの中にごく自然に取り入れられています。このコラムでは、パリの日常にすっかり根づいた感のある「オートリブ」を2回にわたってご紹介しています。
     

 前回ご紹介したように、カーシェアリングシステム「オートリブ」はパリの風景にすっかりなじんでいます。市民だけではなく、外国人観光客も利用できるというのも嬉しいポイント。

 このシステムを導入したパリ市長のドラノエさんは、オートリブを「小さな革命」と表現しています。どうして「小さな革命」なのか。一番に挙げられる理由は、環境への配慮。電気自動車で移動することで、騒音や二酸化炭素の排出を防げます。空間やモノを「個人所有」するのではなく、「共有」する感覚は時代の空気を反映するもの。その感覚を、多くの市民が日常生活で利用する車に広げたところに、このシステムの大胆さがあるのです。

 今回は、そんな「小さな革命」の参加者であるパリジャンたちの生の声をひろいに出かけてきました。

     

 パリ5区。石畳が愛らしいムフタール通り近くのステーションで出会ったジュヌヴィエーヴさん。聞いてみると、どことなく知的な様子をかもし出す彼女はオートリブのヘビーユーザーでした。「今日も、これから彼を乗せて病院に行くんです。オートリブは2年来、つまりサービスが始まった当初から利用しているけれど、このシステムのおかげで大助かりよ。歩くのが難しい病人にとっては、メトロでの移動は無理。かと言ってパリで駐車するのは一苦労だから、自家用車が使えなかったんです。オートリブだったら行き先の近くにステーションを簡単に見つけることが出来るから、安心して通院できるようになりました。唯一の不満は、時に車内が汚れていることくらいね」
     

     

 パリ2区。オペラ座近くのステーションに備え付けの端末を利用して、コールセンターとやりとりしていたのはイザベルさん。利用登録はすでに済ませているにも関わらず、いくら試しても車両の扉を開けるまでいかないとのこと。「オートリブを使うのは初めて。南仏に暮らしている母がパリに来ているから、オートリブに乗せてパリを見せてあげようと思って。パリのメトロは階段が多いから、お年寄りが利用するのには向いてないでしょう。でも私は新しい技術にうとくて……。」しばらくコールセンターの係員と会話を続けた後、「あ、原因が分かった!」とタッチパネルを操作し始めました。ほどなく喜びのポーズを決めて、いかにも嬉しそうにご出発。コールセンターは年中無休・24時間対応でサポートしてくれるので安心して利用できます。イザベルさん、お母さんと楽しいパリ観光を!

     

 その10分後、同じステーション残っていた最後の駐車スペースに滑り込んできたのは、ピエールさんとお友だち。これからお約束があるということでしたが、オートリブの魅力について手短ながらも楽しそうに語ってくれました。「オートリブを使い始めたのは半年前。使い勝手が良くて、仕事でも、プライベートの移動にもちょくちょく利用していますよ。オートリブをデートに使えるかって? もちろん使えると思う。個人的なことを言うと、僕の奥さんは妊娠しているから、オートリブがあって本当に助かっているんです」。そういえば、前半で紹介したグザヴィエさんがオートリブを利用し始めたのも、パートナーの妊娠がきっかけでした。環境に優しいオートリブは、お年寄りや妊婦の味方でもあるようです。
     

 パリ11区。若者に人気のバスティーユのステーションの近くで話を聞かせてくれたのは、映画が始まるのを待っていたサラさん。「私自身はいつもメトロやバスを使っているから、実はオートリブは使ったことがないの。使い勝手は良さそうなんだけど、手続きがややこしいような気がしちゃって。でも、オートリブは未来の交通手段だということは間違いないわね。パリにはそもそも車が多すぎて、いつも渋滞しているでしょう。いつかは自家用車なんてなくなって、カーシェアリングだけ、ということになるかもね。その方が環境にもいいし、“シェアする”っていうコンセプトは素晴らしいと思う。ちょっと意味合いが違うかもしれないけど、私が古着好きなのも、誰かと服をシェアするという感覚が好きだからなのよ」
     

 オートリブは、パリジェンヌが思わずおしゃれと重ね合わせて語りたくなるようなデザイン性も備えています。「ブルーカー」と呼ばれるオートリブを手がけたのは、フェラーリやプジョーなどの車両デザインなどで知られるイタリアはトリノの「ピニンファリーナ」社。パリジャン達にオートリブが受け入れられているのには、さりげなく街に溶けこむその姿も一役買っているのです。

 もともと、空間や衣服などをシェアすることが上手なパリジャン達。環境への意識が高まる中、世界に先がけてスタートしたカーシェアリングシステムは、現代のパリジャン達の感覚にマッチした時代の産物です。市民のライフスタイルやエスプリをしっかりつかみ、それを反映するシステムを作ったパリ市にも拍手を! 歴史あるこの街には、新しいシステムを取り入れる度量の深さ、計画を実行に移す機動力も息づいているのです。

外国人旅行者も利用OK!
 オートリブを利用するための初回登録に必要なのは、国際運転免許証とパスポートなどの身分証明書。公式ホームページから登録してもよし、エスパス・オートリブで係員に手伝ってもらいながら手続きをしてもよし。中には、その場で登録ができるモニターを備えたステーションも。オートリブは、車両の空きさえあれば24時間レンタル可能。次回の旅では、カーナビを備えたブルーカーに乗って、パリの道をパリジャン達とシェアしてみては?

ステーション、エスパス・オートリブの住所一覧
https://www.autolib.eu/fr/notre-engagement/stations-autolib-paris-idf/

オートリブ公式ページ(英語) https://www.autolib.eu/en/
*1日利用の場合、利用料金は30分毎に9ユーロ。1週間利用だと10ユーロの基本料金+30分毎に7ユーロ(2014年1月現在)
     

 

     
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