vol.7 やっぱり楽しい蚤の市 ―ヴァンヴ周辺散歩―
texte & photo : アトランさやか
  今回は、マルシェといっても、アンティークの集まるマルシェをご紹介しましょう。お気に入りはパリの南にある小ぢんまりとしたヴァンヴの蚤の市。地下鉄13番線ポルト・ドゥ・ヴァンヴ(Porte de Vanves)を降りてすぐの通り沿いには、パリの宝物達が何気ない顔をして並んでいます。土・日の朝7時頃から14時頃までやっていますが、いい物に出会える確率が高いのは土曜の朝です。  
通貨がフランだった時代に使われていた値札 レトロな色合いの紙の袋は1ユーロから
    ヴァンヴの蚤の市は規模が小さく、雰囲気も割りとのんびりしたもの。それでも「今買わないと二度とめぐり合えないかも」という臨場感が漂うせいか、物を選び購入するまでには毎回ちょっとしたドラマが生まれます。この写真のお姉さんはチョコレートの型を手にとって吟味していましたが、店主が値段を告げると、恋人らしき人に電話をかけてあれこれ楽しそうに相談していました。
復活祭(パック)で活躍するチョコの型 どちらにしようかしら?
こちらは、18世紀から19世紀のボタン・コレクションにかけては右に出る者なしのエリックさん。彼のボタンの素材についての説明はいつの間にかフランスのオート・クチュールの歴史の話に繋がり、さらに現代モード批評へと発展していきます。今年1月に店をたたんだマレ区のボタン屋のストックを手に入れた為、エリックさんのコレクションはさらに充実したそう。パリ郊外にある家の地下73uはボタンでいっぱいというから驚きです。    
店先にずらりと並ぶ1930年代のボタン 奥のケースの中にある18〜19世紀のもの
  ヴァンヴの蚤の市を見た後は、ちょっと歩いた所で開かれている古本市にも足を伸ばします。こちらは観光客風の人は少なく、朝の時間を持て余したパリのおじさん達の憩いの場、といった風情。手軽に購入できる文庫本があるかと思うと、画集や写真集、19世紀のイラスト入り豪華本が200ユーロ以上で売られていたりもします。大好きな作家バルザックの初回限定本を手に取ってページを繰ると、気持ちが一気に明るくなるような色鮮やかでユニークな挿絵でいっぱい。流れた時間からすると考えられない程の保存状態の良さに思わず見入る私を見て、頼んでもいないのに、控えめな店主が20ユーロおまけしてくれると言ってくれたけれど……。ちなみにこの古本市が開かれている鉄骨の建物は、昔は馬市場として利用されていたそう。パリの美しい町並みは、古い建築物を再利用する伝統に支えられていることを改めて実感します。蚤の市が根付いているのも、パリ市民が古い物に寄せる愛着の現れなのでしょう。
絵本を懐かしそうに手に取る大人も多い
  会場をすっかり一周したら、隣のジョルジュ・ブラッサンス公園でのんびり休憩。公園内には、バラ園やハーブ園、それに葡萄園や蜂の巣まであり、身近に自然を感じられます。公園入り口のパン屋さんに寄って、ちょっとしたパリの朝ごはんを調達するのも楽しみ。私が、他でもないヴァンヴの蚤の市に惹かれる一番の理由は、実はこの最後の寄り道かも知れません。  
バラ園に囲まれて時間を過ごすパリ人 焼きたてのさくさく生地が美味しい

■ヴァンヴの蚤の市(土・日7時〜14時頃)
1920年代から続く蚤の市。
目ぼしいお店はどちらかというとGeorges-Lafenestre通りに集中している。
住所 Angle avenue Georges-Lafenestre et avnue Marc-Sangnier 75014 Paris

■古本市(土・日9時〜18時頃)
こちらは朝が弱くても楽しめます。
商売気のあまりない店主の緩い対応のおかげでのどかな気分になれる。
住所 106, rue Brancion 75015 Paris

■Pain Max Poilane(パン屋)
嬉しいことに土・日とも営業しているパン屋さん。
お勧めはアップル・タルトとクロワッサン。
住所 87, rue Brancion 75015 Paris
電話番号 +33 (0)1 48 28 45 90


<次回>vol8. 夏のパリの定番サラダ  ―宮脇誠さんの台所から―

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