vol.3 楽しいお買い物 −本格ビーフ・シチューをつくるには−
texte & photo : アトランさやか
  いつ行っても、マルシェでは元気な声が飛び交っています。私が注目している元気なおじさんは、歌いながら、叫びながら、かつ「売り場を踊りながら走る」という芸当を見せてくれます。“Abricot coco, tu m'entends, tu m'entends pas?(あんずちゃん、聞いてるの? 聞いてないの?)”“Chaud cacao! Chaud, chaud, chaud, chocolat!(熱いよカカオ、ココアはアツ、アツ!)”など、意味がないけれど可愛らしい掛け声をあげながら、瞬く間に野菜や果物を計りにかけて売りさばく芸はさすが。ただ、そんな芸にぼ〜っと見とれていると、買う予定のものをすっかり忘れてしまうのが難点です。スタンドに並ぶ旬のものなどを見て、その場でつくる料理を決められたらいいのですが、レパートリーにも記憶力にも限界のある私は、マルシェへ向かう前にリストづくりにいそしみます。
[写真1 マルシェでの買い物は量り売り]
リストをにぎりしめてマルシェへ着いたら、全体を見渡して、ちょっと待つのは覚悟でお客さんがたくさん並んでいるスタンドを選びましょう。フランス人は美味しくて安いものを探すのが上手なので、彼らについていけばハズレは少ないはず。今回はフランスのママンの味「ブフ・ブルギニョン」(ビーフ・シチュー)をつくるためにマルシェをまわってみます。
[写真2・3 人気のスタンドには理由があるはず]
   
    まずはお肉を。すでに角切りになっているブフ・ブルギニョン用の牛肉、もしくは肩肉やスネ肉など好きな部位を選んだら、1キロ欲しいときは「800gくらい」、などと少なめに注文しましょう。注文よりも多めに肉を切ってから計りに載せて、「ちょっと多くなっちゃったけど大丈夫?」と朗らかに聞いてくるのがパリの商人。豚のバラ肉もこれと同じ要領で注文します。
[写真4 薔薇色のお肉が並ぶ]
[写真5 うさぎのお肉!]
続いて料理を美味しくしてくれる玉ねぎ、小玉ねぎを。玉ねぎやエシャロットなどのユリ科の野菜を置いている屋台にはパセリ、バジル、ミントなどのハーブ類、にんにく、ショウガなども置いていることが多いので、ブーケ・ガルニ(ローリエとタイムを束ねたもの)やにんにくもついでに買っておきましょう。次に八百屋に寄ってにんじんを選びます。
[写真6 落ち着いた色合いのスタンド][写真7 そのまま食べても美味しいにんじん]
   
  買い物が終了したら近くのカーブ[写真8]でワインを選び、パン屋で焼きたてのバゲットを手に入れて、端をかじりながら帰るのが定番です。ブフ・ブルギニョンは2時間半も煮込んでやっと完成する料理。コトコト優しい音をたてるお鍋の近くに座りながら、本や雑誌のページをめくったり、誰かにゆっくり手紙を書いたりするのは休日の醍醐味かもしれません。
[写真9 お気に入りのココット鍋はチョコレート色]

 
ブフ・ブルギニョンのつくり方

このレシピは、フランス料理界の巨匠でLa cuisine du marché(「マルシェの料理」)などの人気著書もあるポール・ボキューズのレシピをベースにしています。チョコレートを加えるテクニックは、夫エマニュエルの親友、料理通のロノンに教わったもの。時間のあるときに是非つくってみてください。
    <材料>6人分
赤ワイン・・・・・・・・・・・・・・・・・・1本
牛肉・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1.5kg
豚ばら肉・・・・・・・・・・・・・・・・・200g
玉ねぎ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5個
にんじん・・・・・・・・・・・・・・・・・・3本
小玉ねぎ・・・・・・・・・・・・・・・・・20個
にんにく・・・・・・・・・・・・・・・・・・適宜
ブーケガルニ・・・・・・・・・・・・・・1束
粒こしょう・・・・・・・・・・・・・・・・・数粒
炒め用バター・油・・・・・・・・・・適宜
塩・こしょう・・・・・・・・・・・・・・適宜

■下準備
・ブルゴーニュの赤ワイン1本にブーケ・ガルニ、粒こしょうをいくつか加えたものに、ひと口大に切った約1.5キロの牛肉を一晩漬けこむ。
・玉ねぎ5個、にんじん3本を適当な大きさに切っておく。
・豚ばら肉200グラムは小片に切って湯に通してから、バターと油で炒めておく。

■調理方法
1 牛肉をワインの漬け汁からとりだして水分をキッチンペーパーでふき取る。
2 ココット鍋にいれて表面に焦げ目がつくまでいため、塩・こしょうする。
3 牛肉を取り出し、玉ねぎとにんじんをいためる。
4 お鍋の中に牛肉と豚ばら肉を戻し、ワインの漬け汁を加える。
5 沸騰するまで加熱し、軽くつぶした皮付きのにんにくをひとかけいれる。
6 蓋をして2時間〜2時間半くらい弱火で煮る。
7 バターで炒めた小玉ねぎ20個ほどを加えて15分ほど煮たら出来上がり。

■ポイント
・ワインはできればブルゴーニュがいいけれど、コート・ドゥ・ローヌなどコクのある赤であれば代用可能。
ワインの種類によってはできあがりの色が紫になってしまうこともあるけれど、味が良ければよし!
・お肉を漬け込む時間はできたら一晩。でも、いそぎの場合は2時間くらいでも大丈夫。
・豚ばら肉は市販のベーコンで代用しても。
・マッシュルームを入れても美味しい。その場合は小玉ねぎと一緒に炒めてから入れる。
・隠し味に、カカオ含有率が70パーセントのチョコレートを最後にひとかけら加えると味に深みが。
・一緒にいただくワインはもちろんブルゴーニュでもいいし、お好みで他の赤ワインでも。


<次回>vol4. ピクニックのすすめ 〜春になったら〜

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