vol.14 南仏、ニームへ ―太陽の香りがするマルシェ―
texte & photo : アトランさやか
  今冬のヨーロッパには、10年に一度という大寒波がやってきました。寒さは少しずつ和らいできましたが、パリでも気温が氷点下になる日が何日も続き、雪が何cmか積もるという異常事態に。マルシェに行くにも靴下2枚重ねはもちろん、耳あてまでして寒さ対策。みんなで集まっては、体が「ふわっ」と温まるポトフや、「ラクレット」と呼ばれているチーズ料理を生ハムやじゃがいもと一緒にたっぷり食べたりしつつ、春を待ち望む毎日です。  
溶かしチーズをたっぷりいただく「ラクレット」 中央にいるのがポトフをつくってくれたサンディ
そんな中、あまりの寒さにたまりかねた私は、思い立ってひさしぶりに南フランスへ旅することに。行き先は、まだ行ったことのないニーム。パリから3時間で行けるのも、ローマ時代の遺跡を歩いてまわれるのも、気軽な旅をしたい気分にぴったりだったのです。さて、現地に着いて、まず目についたのが扉についたノック用のフック。昔々、チャイムがまだない時代には、このフックを使って「トック、トック」と扉を鳴らしたそうです。    
遺跡も行ったけど、ついこんな小物に目がいく ニーム名物の「ブランダード」が詰まったパイ
  旅をしていても、自然と足が向いてしまうのがマルシェ。この地方では、海の幸と山の幸と両方を思う存分味わえるのが魅力だといいます。郷土料理として有名なのが、干ダラとオリーヴ・オイルと少量のミルクをあわせた「ブランダード」。あるビストロではじゃがいもの上に「ブランダード」をのせたポテトグラタン風、ニモワ(ニーム住人)の友人の家では、ズッキーニの上にのせてオーブン焼きにしたアペリティフとして登場。旅先で覚えたレシピは何よりの思い出です。  
リオン湾などから届く新鮮な魚が並びます 名物pâté nimoisの中にはパテがぎっしり
    南仏のマルシェならではの大きなトマトや何種類も並んだオリーヴの実やタプナード、「太陽に照らされたみたい」と言われる南仏訛りで勢いよく声を出す商人たちにかこまれながら、マルシェ見物スタート。3500uもの敷地内をひとまわりしたら、次はすっかり旅行者気分でお土産探しへと目を光らせます。帰りの荷物が重くなるのは覚悟で、草の爽やかな香りがしてくるようなオリーヴ・オイルや名物の「ブランダード」の缶詰を選びました。
ここではオリーヴ・オイルが「試飲」できます こちらはお土産用に購入した「栗のジャム」
  ニームの中央市場はなんと年中無休。この街の人たちが「食」にかける意気込みが感じられるよう。ところで、このマルシェで一番気になったのは、イベリコ豚(黒豚)のとろけるような生ハムや、辛いだけではなくまろやかな風味があるエスペレット唐辛子など、世界でも注目されているスペイン産の食材が並んでいることでした。そういえば、ニームに着いてまず入ったビストロでも、タパスがメニューに入っていました。不思議に思ってニモワのジャン=シルヴァンに聞いてみると、「ニームからスペインはすぐ近く。ピレネー山脈を越えたらすぐですよ。ヴァカンスはスペイン、っていうことが多いなあ」と。あらためて地図を広げると、なるほど、ニームから200km行くともうスペイン。そして、地図を見ながら目に飛び込んできたのが、かねてから気になっていた地方、ペイ・バスクです。ニームで火がついた旅行熱に浮かされて、次回はスペインとフランスにまたがるこの地方に遊びに行くことに!
後ろの棚にはペイ・バスク産のエスプレットが

■Les Halles de Nîmes (ニームの中央市場)
5, rue des Halles
7時〜13時半、年中無休


<次回>vol.15 バスク地方へふらり旅 ―食いしん坊の国―

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