vol.13 パリの空の下、和のにおいは流れる ―多恵子さんのマルシェ―
texte & photo : アトランさやか
「北マレ」と言えば、ここ何年か新たなファッション・スポットとして注目を浴びている地区ですが、そんな中にあるのが今回ご紹介するMarché aux enfants rouges(赤い子ども達のマルシェ)。モード関係のブティックや現代アートの小さなギャラリーなどのすぐ隣に、1615年に開かれたという歴史ある常設マルシェが残っているのはパリならではかもしれません。このマルシェの一番の特徴は、別名「レストラン・マルシェ」と呼ばれるほど軽食コーナーが充実していること。平日は近くで働く人たちや住人がランチに立ち寄り、週末は、このマルシェの魅力を聞きつけて集まるパリジャンや観光客で活気づきます。そんな中でもひときわ目立っているのが、和食のスタンドChez Taeko(多恵子の店)。日本の定食屋さんにあるような、とりつくね団子やトンカツ、海鮮丼やまぐろ漬け丼といった丼物などのメニューは、在仏日本人にもフランス人にも大人気です。  
食べた人が、午後も元気に仕事ができますように
    もともとこのマルシェが好きだった、という多恵子さんがこのマルシェに和食のレストランを開いたのは約3年前。着飾って行くレストランとは違って、マルシェ内の気さくな雰囲気で美味しい和食がいただけるとあって、その評判は広がる一方です。「自分を料理人だと思ったことはない」とあくまでも控えめな多恵子さんですが、手ごろな値段で、栄養がしっかりととれるこのレストランは、今のパリ、しかもこの地区では稀な存在です。
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  多恵子さんにとって、毎日マルシェで顔を合わせる野菜や果物、魚屋や肉屋などのスタンドのメンバーはまるで「家族のよう」と言います。このマルシェ独特の温かい空気は、出店者たちの連帯感から来るものなのかも。午前中には閉まってしまう多くのマルシェとは違って、夜まで開いているこの常設マルシェでは、時間がゆったりと流れています。多恵子さんがお店を出す前からこのマルシェが好きだったというのも納得できます。  
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基本的にこのマルシェは火曜日から日曜日まで一日中オープンしています。ただ、新鮮なものだけを置いているという魚屋さんは火曜日と木曜日はお休み、パリの北にあるピカデリー地方の農家から、昔ながらの製法でつくられている美味しいパテやフォアグラを運んでくるクリスティーヌさんのお店Ferme de Masenguyは金、土、日曜日のみの営業なので、このマルシェを十分満喫するためには、金曜日から週末にかけて出かけるのが正解です。    
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  そして、ここに来たら寄りたいのが、エステルさんが営むL’Estaminet(小さなカフェ)。真っ白に塗られた壁、自然の風合いを残したナチュラル・ウッドのテーブルや椅子、銀色に光る昔風のカウンター。窓際の席には広い窓ガラスから日の光が差し込み、暗くて寒いパリの冬を一瞬忘れてしまいます。賑やかなランチも魅力的ですが、人気の少ない朝や夕方に、カフェオレなんかを飲みながら、ここでゆっくりする時間はまた格別です。  
整然と並ぶワイングラスにコーヒー用カップ 柔らかい微笑みが印象的なエステルさん

■Marché aux enfants rouges
39, rue de Bretagne 75003 Paris
火〜土 9時〜20時
日 9時〜14時


<次回>vol.14 南仏、ニームへ ―太陽の香りがするマルシェ―

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