パリのブロカント

山本 ゆりこ Yuriko YAMAMOTO
菓子・料理研究家/カフェオレボウル収集家
1972年、福岡県生まれ。日本女子大学家政学部食物学科卒業後、1997年に渡仏。パリのリッツ・エスコフィエとル・コルドン・ブルーにて製菓のグラン・ディプロムを取得後、三ツ星レストランやホテル、製菓店にて修業を重ねる。
2000年に単行本デビューし、以降、フランス菓子の枠を超え、フランスやヨーロッパ諸国の食文化、ライフスタイルなどをテーマにした本を数多く執筆。2009年に帰国し、福岡市在住。市内のカフェで、食とトークを楽しむ料理教室「山本レストラン」を始める。
山本さんのブログ 山本ホテル

ブロカントのある暮らし−インテリアと雑貨編 2013.1.21
 
  Les années 30 (レ・ザネ・トラント)つまり1930年代のフランス文化が好きだという野崎さんは、偶然にも、1930年代に建てられたアパルトマンで暮らしている。部屋に足を踏み入れた瞬間から、古いものの中から、好きなものを探すこと、好きなものと出合うことを楽しんでいる様子が、あふれるように伝わってきた。
  購入が決まったときはリフォームが必要で、バスルームとキッチンは自ら図面を引いたという。さらに、当初6週間の工事予定が、7か月になり、2009年5月にやっと入居することができたのだとか。予想以上に手間と時間がかかった空間を、どんな風にデコレーションしていったか、そのプロセスを尋ねながら、部屋を案内してもらった。
     

陶器とメタルでできたランプ台

微妙にフォルムが違うフック
  玄関に入って、ベッドルームまで真っすぐのびる廊下の壁に飾られたすりガラスの照明は、壁に咲く大輪の花のように垂れて美しい。「新しく住むところの照明を考えたとき、陶器とメタルにしようと思ったんだ。そんなときに出合ったのがこの照明。先に台の部分を見つけて、あとからチューリップというシェードの方を見つけた。全部で3つあって、ふたつは廊下に、もうひとつは洗面台のところにとりつけてあるよ」。
  もうひとつの照明を見に、ベッドルームを抜け、野崎さんが自分で図面を引いたという白いタイル張りのバスルームへと向かう。化粧鏡の上から、チューリップシェードが可憐に垂れている。そして、白い陶器のフックもちゃんととりつけられていた(詳しくは前回のストーリーをご覧ください)。野崎さんに見つけてもらったフックは、長い時間をかけてやっとここに収まっている。その前にも別の誰かの家で使われていたものが、また別の人の家で使われ続けている。こんなストーリーもまたブロカントならではのロマンだなあとしみじみ。
 
鏡の枠もパリのブロカントで見つけた絵の額縁を利用
     
 ベッド兼プライベートルームは、私が最も憧れるベッド中心のスタイル。左側にしつらえてある木製のつややかなクローゼットは、探し続けてやっと出合ったものらしい。きれいに磨かれ、あつらえたようにベットの横に収まっている。
  机に合う椅子をと、探して見つけたSTELLA(ステラ)の椅子もまた素敵だ。ステラ社は公共施設の備品を作っているフランスのメーカーで、古いデザインは人気がある。野崎さんの2客の椅子はどちらもステラ社のもので、デザインは全然違うのに、並べて置いても不思議なくらい違和感がない。


ステラ社のマーク

どちらもLes indislocables(アンディスロカブル)という「美的かつ頑丈で機能的な」椅子シリーズ

1930年代のランプ
クローゼット
 

絵画コレクションの反対側の壁には、大きな鏡がとりつけられているので、絵画が二重に楽しめる
  プライベートルームの後は、小さなギャラリーのようなリヴィングルームへ。壁にA5〜A4サイズくらいの絵画がアトランダムにレイアウトされている。5年ほど前に、この絵画コレクションを見せてもらってから私も刺激を受け、気になる存在になっているオブジェだ。以前見せてもらったときは10枚にも満たなかったと記憶しているが、倍くらいに増えていた。野崎さんがコレクションしている絵画は、全体的に薄くて淡くて、グレーがかった海や空の風景が多いからか、たくさんあっても圧迫感がなく、模様みたいに壁にスッと溶け込んでいる。最近の堀り出しものだという花の絵は、椅子の上にパラッと置いてあった。
     

今、一番気に入っている絵画

最近の掘り出しもの

ベルギーの蚤の市で買った絵画
 
  アパルトマンを出るとき「今はね、ベッドルームにチェストがほしくてずっと探しているのだけど、まだ見つからないんだ」と野崎さんがいった。そうしたら、私が日本に帰国した直後に、「チェストが見つかったよ」という喜びのメールが写真と共に送られてきた。写真の中のチェストは、とても彼らしいセレクトで、ベッドルームにピタリと収まっている様子と、それをうれしそうに眺める野崎さんの笑顔が容易にイメージできた。
  好きなものを探し続けることって、やっぱりすごくいい。それがブロカント(古いもの)の中からってところも、ものがあふれる時代だからこそ、大切にしていきたいなあと思うのだ。
   
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