山本 ゆりこ Yuriko YAMAMOTO
菓子・料理研究家/カフェオレボウル収集家
1972年、福岡県生まれ。日本女子大学家政学部食物学科卒業後、1997年に渡仏。パリのリッツ・エスコフィエとル・コルドン・ブルーにて製菓のグラン・ディプロムを取得後、三ツ星レストランやホテル、製菓店にて修業を重ねる。
2000年に単行本デビューし、以降、フランス菓子の枠を超え、フランスやヨーロッパ諸国の食文化、ライフスタイルなどをテーマにした本を数多く執筆。2009年に帰国し、福岡市在住。『パリの宝物70』に続く『秘密のロンドン50』(共に毎日新聞社)を出版したばかり。
山本さんのブログ 山本ホテル

ブロカントのある暮らし−キッチンと食器編 2012.10.15
 

1930年代のアパルトマンの入り口
  パリ郊外に暮らす野崎直人さんは、白いブロカントの魅力を教えてくれたひとりだ。最後に会ったとき「自分のアパルトマンを持つことになったら、これをつけるんだ」と形のよい、陶製のフックを見せてくれた。それは彼の手の上でつるんと光り、まぶしかった。それから数年後、パリの街角で偶然再会。念願のアパルトマンを購入したことを報告してくれて「あのフックもちゃんとバスルームについてるよ」とうれしそうにいった。
 
  週末にブロカントやヴィッド・グルニエをまわり、家具や調度品、生活雑貨をひとつひとつ揃えていく。野崎さんがそんな暮らしを始めてから15年以上になるという。「僕の場合、好きってだけじゃ買わないみたい。自分が出せる値段かどうか、そのときに持って帰れる状況かどうかというのも大切。この3つの条件が揃って始めて買うことを決めるんだ」と、堅実な彼らしいもの選びのポイントを語ってくれた。新しいアパルトマンには、そうやって野崎さんのもとに集まってきたブロカントであふれている。

アパルトマンの部屋からの眺め
 

キッチンの様子1

キッチンの様子2
  まずは、私の職業柄、最も興味深いスペース、キッチンとテーブルまわりのものから見せてもらった。コンパクトなキッチンの白壁には、小さなキャビネットと野崎家の中で数少ない現行品であり、自分でとりつけたという棚が並んでいる。
  「これはどこで見つけたの?何に使っている?」という質問に、野崎さんは記憶をたぐりよせながらゆっくりと答える。「これは、ルクルーゼのフォンデュ鍋。フォンテーヌブローの近くの庶民的なブロカントで、値切ってみたら2ユーロで買えたんだ。バスマティライスを炊くのに使っているよ」その隣のピッチャーやグラスも、家にやって来た経緯を丁寧に説明してくれた。「最近の掘り出しものはこれ。給食でコンポートを入れるのに使っていたデュラレックス社の器だよ。四角って珍しいよね」「私も透明な器って大好き。それも繊細なタイプではなく、デュラレックスみたいな頑丈で分厚いの。給食で使われていたっていうストーリーも、購買欲をそそるね」そんな楽しいやりとりが続いた。


キッチンの様子3
     
  野崎さんの食器棚は白がメイン。形、用途、時代、窯元などいろいろあるから、キッチン以外の場所にもインテリア雑貨のようにレイアウトされている。プラス、色もの、透明のものが少しある。一挙公開といきたいところだけど、そんな欲望をぐっと押え、よく使っているという白もの、色もの、透明のものを、ダイニングテーブルの上に並べてもらった。
     
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白い器


  長方形、八角形の皿は、アペリティフ(食前酒)をいただくときに、おつまみなどをのせて使う。その上の小皿は、焼き菓子などをひと口大に切ってのせる用。その隣の少しくぼみのある丸皿は、パスタなどを食べるときに使うそう。カイ・ボイスンのカトラリーと共に使用頻度が最も高いお皿だ。楕円と丸の大皿は、料理を盛りつけるとき用。友人を招いてテーブルを囲むことが習慣になっているフランスでは、ひとり暮らしでも増えていくタイプのお皿だ。
     
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色もの

  職業柄、ロンドン出張が多く、現地で見つけてきたものもある。イギリスの陶器メーカーPOOLE(プール)のシンプルな色皿がそうだ。グリニッジのマーケットで見つけてから、直径15pくらいのものを少しずつ集めているとか。15pは、朝食のパン皿やデザート皿と、何かと使いまわしがきくサイズ。中でもペールグリーンのお皿は、取材の1週間ほど前のロンドン出張で、ホテルの近くを散策中に、チャリティーショップで見つけたもの。野崎さんが選ぶ色はいつも寒色系。テーブルコーディネイトが甘くなり過ぎず、木の色にもよく合うかららしい。
     
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透明のもの


  透明の器はメイド・イン・フランス、特にデュラレックス社にこだわって集めている。左上の四角くて小さい器が、給食でコンポートを出すのに使っていたもの。ボウルはサラダボウルとして。バターケースもデュラレックス。透明な丸皿は野菜がみずみずしく見えるから、サラダをとり分けたり、トマトやアボカドのスライスをのせて使っているそう。カップはデュラレックスを集めていると知った友人からのプレゼント。そして、レモン搾り器や計量カップといった道具類も、厚みのあるガラスでフランス製だ。
   
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野崎さんのアパルトマン訪問は、最終回へと続く。
   
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