山本 ゆりこ Yuriko YAMAMOTO
菓子・料理研究家/カフェオレボウル収集家
1972年、福岡県生まれ。日本女子大学家政学部食物学科卒業後、1997年に渡仏。パリのリッツ・エスコフィエとル・コルドン・ブルーにて製菓のグラン・ディプロムを取得後、三ツ星レストランやホテル、製菓店にて修業を重ねる。
2000年に単行本デビューし、以降、フランス菓子の枠を超え、フランスやヨーロッパ諸国の食文化、ライフスタイルなどをテーマにした本を数多く執筆。2009年に帰国し、福岡市在住。『パリの宝物70』に続く『秘密のロンドン50』(共に毎日新聞社)を出版したばかり。
山本さんのブログ 山本ホテル

古もの探しの魅力 −J'Adore Chiner 2012.07.13
 
  フランス語で「古ものを探すこと」をChiner シネという。シネは、フランス人の楽しみのひとつで、さらに見つけてきたものを暮らしの中でどう使うかを懸命に考えることもまた楽しみのように感じられる。暖かくなってくると、フランスの田舎の街や村では、Brocante ブロカントやVide-grenier ヴィッド・グルニエが頻繁に開かれる。ヴィッド・グルニエは、「屋根裏を空っぽにする」という意味で、自分が使わなくなったもの、長い間しまっておいたものを他の誰かに買ってもらうために開かれる市だ。日本語の「フリーマーケット」に近いニュアンスだろうか。大規模なものだと、屋台なんかもあり、地方ならではのフードやスイーツも売っている。
     
  初夏から夏にかけての地方への旅は、私もまた、週末に多く開かれるブロカント&ヴィッド・グルニエが楽しみでたまらない。まず街や村の観光案内所に行き、カレンダーをもらうようにしている。街や村だけでなく、その近郊で開かれるブロカント&ヴィッド・グルニエの日時、場所、スタンド数などが掲載されていて、それをもとに先の旅程を立てる。   観光案内所では、ショップとして経営しているブロカントの情報ももらえるから、週末以外は、そこを狙う。シネは漠然としたもの探しではつまらないと思う。こんなものを探しているという明確な目標があった方が、楽しく続いていくような気がする。もちろん、ひと目惚れ的な出合いもあるけれど……。
     
    10年ほど前に、南フランスを旅したことがあった。その時は、ポプラ並木の下を車で走っていると、手書き文字のBrocanteの看板を頻繁に目にしたものだ。2年前に、同じようなルートで旅したのだが、看板は、とても少なくなっていた。その時に見つけた、山間の小さな村のブロカントが、今でも脳裏に  
   
  しっかりと焼きついている。 村のメイン広場といっても、そう広くないところ20軒くらいのスタンドが並んでいた。広場に面して建つシンプルな建物は、村役場と学校を兼ねたもの。その周りで無邪気に遊ぶ子供たちの笑い声が、絶大な効果音として響き渡る。「フランスシネマのよう……」ありふれた比喩だが、そうなのだった。見つけた時のこんなイメージやエピソードが付加価値となり、見つけたものがより一層いとおしくなる……。これって、シネの魅力のひとつなのだと思う。
         
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