山本 ゆりこ Yuriko YAMAMOTO
菓子・料理研究家/カフェオレボウル収集家
1972年、福岡県生まれ。日本女子大学家政学部食物学科卒業後、1997年に渡仏。パリのリッツ・エスコフィエとル・コルドン・ブルーにて製菓のグラン・ディプロムを取得後、三ツ星レストランやホテル、製菓店にて修業を重ねる。
2000年に単行本デビューし、以降、フランス菓子の枠を超え、フランスやヨーロッパ諸国の食文化、ライフスタイルなどをテーマにした本を数多く執筆。2009年に帰国し、現在は福岡で20冊目となる本を執筆中。
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白くて古いもの −La Brocante Blanche 2012.04.15
   
 Brocanteブロカントというフランス語も随分浸透してきた。私とブロカントの出合いはカフェオレボウル、と思われる方も多いかもしれない。でも、パリで暮らし初めて、最初に目にし、手にしたであろうブロカントは、カフェオレボウルではないことは確かだ。が、蚤の市にひしめくオブジェの中で、ひと目惚れをしたのは、間違いなくこれだろう。吸い寄せられるような色や柄、両手におさまる適度な大きさ、たくさん積み重なって並べられた様子など、その魅力にすっかり引きつけられ、私のコレクションは始まった。
 カフェオレを愛飲している私は、集めた中からその日の気分でチョイスし、ローテーションさせて使ってみる。そんなことを繰り返しているうちに、何度もテーブルにのせたくなるのは、白いカフェオレボウルだという結果に至った。白でなくてもいい、クリーム色でもアイヴォリーでも、少しグレーを帯びていてもいいのだ。
 
   
   去年、キャトル・セゾン監修のもと『暮らしを彩るパリの生活雑貨カフェオレボウル付 きBOOK』という小冊子を作らせていただいた。その折、カフェオレボウルを集めていらっしゃるというパリのマダムにお会いした。ご自宅にあるのは一部だとおっしゃっていたが、それでも膨大な数のカフェオレボウルを前に、私の心は高揚する。色や柄のあるものは木の扉がついた食器棚の下に隠すように、白いカフェオレボウルはガラス扉がついた上の方によく見えるように収まっていたのが印象的だった。  
   
 

  ガラス扉の方には、ボウル以外にも、Soupiereスーピエールと呼ばれるスープを盛りつける蓋つきの大きな器、テリーヌ型、ケーキ皿、ティーカップなども飾ってあった。もちろん、白だけをぎっしり集めて。「やっぱり白がいいですね」とおっしゃったマダムの言葉に、私は心から賛同した。
 ブロカントの、つまり古ものの白い器は奥深いと思う。陶器か磁器か、作られた時代や窯元でも大きく異なる。そしてさらに「人に使われていた」という歴史が味わいとなってはっきり見てとれるのも白い器の特徴だ。器だけではない。ベッドカバー、テーブルクロス、キッチンクロス、ナプキンなど、布類にも同じことがいえる。
 
 白い布に始まり、白い器、無色透明のガラスの器やグラスを集めている友人がいて、4年前になるか、彼のコレクションを見に、13区のアパルトマンを訪れたことがあった。彼はまず、今のタオル地が作られる前のタオルや糊のきいた白いキッチンクロスの束を見せてくれた。細かいワッフル状に織られた昔のタオルの風合いがとても気に入ったので、それから私も蚤の市で探してみた。今でも使っているが、生地が四方八方にのびて、くたくたになった感じがまたいい。     次に、白い器を出してきてくれた。器はパリ郊外にあったショワジー・ル・ロワ窯のものが多く、深皿や楕円形の大皿、ピッチャーなどが、ひとつひとつを丁寧にテーブルに並べられてゆく。目の前で、静物画を描くようなシーンがゆっくりと展開されていった。ショワジー・ル・ロワは、カフェオレボウルも作っていて私も色や柄つきをいくつか持っているが、白を見たのは初めてだった。
   
     
  白にも本当にいろいろあって、カフェオレボウルの窯元として有名なディゴワン窯の白は、ミルキーホワイト、キャンディのミルキーのような色をしている。個人的にはジアン窯の白がとても好きで、黄味が濃くてヴァニラアイスクリームみたいな色。でも、残念ながらジアンの無地のブロカントには出合ったことがない。

 パリでブロカントを愛でる人たちに出会い、触発され、私の暮らしの中にも溶け込んでいった。最初は色や柄に引きつけられていたのが、白いもののディテイルに目を留め、素敵だなと思えるようになったのだから、そんな自分の成長を少しばかり褒めてやりたくなる。
     
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